感情に振り回されなくなる「脱フュージョン」入門

仕事でミスをして「自分はダメだ」と落ち込んだり、将来の不安に押しつぶされそうになったり。そんな経験、ありませんか?

僕も仕事の責任が増えてから、ネガティブな思考に飲み込まれることが増えました。「またミスしたらどうしよう」「周りにどう思われてるんだろう」……。

でも、そんな“考え”に振り回されてしまうと、目の前の行動がどんどん制限されてしまうんですよね。

そんなときに出会ったのが「脱フュージョン」という考え方です。これは、認知行動療法(ACT)の中でも注目されている概念で、「思考と現実を切り離す」ことを意味します。

この記事では、脱フュージョンの基本から、日常で使える具体的な方法までを紹介します。

脱フュージョンとは?

「フュージョン(fusion)」とは、思考と自己がくっついてしまった状態。つまり、考えたことを「真実」や「自分そのもの」だと信じてしまう状態です。

たとえば、「自分は無能だ」という思考が浮かんだとき、それをまるで事実かのように受け止めてしまう。これがフュージョンです。

一方で「脱フュージョン(defusion)」は、その考えを一歩引いて眺め、「これはただの思考だ」と捉える姿勢です。

思考を“雲のように流れるもの”として見られるようになると、心がグッと軽くなります。

脱フュージョンの効果

脱フュージョンを実践すると、以下のような変化が起こります。

ネガティブな感情に巻き込まれにくくなる

思考を距離を持って眺められるようになると、「怒り」「不安」「自己否定」などの感情に支配されにくくなります。その結果、感情による衝動的な言動が減り、冷静な判断がしやすくなります。

落ち込んでも、回復が早くなる

一度落ち込んでも、「あ、これは“ダメだと思い込んでるだけ”かも」と気づけるようになるため、気分の回復が早くなります。感情の波を穏やかに乗りこなせるようになるイメージです。

ストレスとの付き合い方が変わる

ストレスの原因を“排除すべきもの”ではなく、“一緒に付き合っていく対象”として受け止められるようになります。結果的に、ストレスそのものへの耐性が上がります。

自分の価値観に沿った行動がしやすくなる

「思考=事実」ではないと理解することで、自分にとって本当に大切なこと(価値観)を軸に行動できるようになります。行動の自由度が増し、満足感や達成感も得られやすくなります。

実際、僕自身も「また怒られるかも…」という不安をただの考えとして切り離せたことで、仕事でのチャレンジに前向きになれました。

自分の行動を決めるのは「思考」ではなく、「価値観」や「目標」であるべきなんですよね。

今すぐできる脱フュージョンの練習法

1. 思考に名前をつけてみる

「また失敗するかも」という思考が出てきたら、「あ、これは“失敗恐怖くん”だ」とラベリングしてみましょう。ユーモアを交えると効果的です。名前をつけることで、その考えを“外から眺める”ことができ、感情の巻き込みが弱まります。

2. 「私は今、『◯◯』という考えを持っている」と言い換える

「私は今、『上司に嫌われている』という考えを持っている」と言葉にすることで、自分と考えの距離が生まれます。これは“言語による距離化”と呼ばれ、思考を「ただの情報」として捉えるための有効な手段です。

3. 頭の中の声を変な声で再生してみる

ネガティブ思考をミッキーの声やロボットの声などで再生すると、真実味が薄れて笑えてきます。冗談のように思えるかもしれませんが、「思考は演出次第で印象が変わる」ということを体感できる優れた方法です。

4. 書き出して客観視する

思考をノートやスマホに書き出してみましょう。書くことで“見える化”され、自動的に「距離を取る」状態になります。その思考がどれだけ極端か、事実とズレているかに気づくこともあります。

5. 思考を「流れるもの」としてイメージする

頭に浮かぶ思考を「川に流れる葉っぱ」や「空に浮かぶ雲」としてイメージし、「ただ流れていくのを眺める」練習をしてみましょう。瞑想に近いですが、数分間でも十分な効果があります。

まとめ

「考えすぎて動けない」というのは、多くの社会人が抱える悩み。でも、脱フュージョンを意識することで、思考に支配されず、自分らしい選択ができるようになります。

完璧にできなくてもOK。大切なのは、「気づいて距離を取る」ことを少しずつ練習すること。

自分の思考とちょっと距離を取って、もっと自由に、もっと軽やかに生きていきましょう!